いい思い出

いい思い出がいっぱいあるなぁ。

これからもいい思い出を作りたい気持ち。
自分ではダメだって分かってる気持ち。

どっちを信じればいいかな？

「お帰りなさい」

その人が遠くから帰ってきたとき「お帰りなさい」のメールをするのが好きだった。

くれないのですね(T_T)

精神科のN先生のところへ行った。

「おはようございます」
「はい、おはようございます」
「すごい雨降ってますね」
「そうですね」

「顔面神経麻痺は、どうなりました？」
「だいぶ良くなりました。あと、ほんのちょっとだけ、急いでものを飲んだ時とか、こぼすときがあります。それと、しゃべりながら笑うことがあったとき、『あ、今、片頬しか動いてないなぁ』て気付くことはあります」
「そうですか。よくなっているのですね」
「それは、確実に」

手紙を渡す。

「次回は、入院の都合があるんですね」
「はい」
「お薬は、この手紙に書かれているようにしてくれていいですよ」
「ありがとうございます」

「で、ロヒプノールですが」
「はい」
「5時間ですか」
「はい」
「もう少し眠れたらいいんですが」
「そうですか？」
「でも、昼間の眠気が少しあるようですね」
「まぁ、そうです」
「うーん」
「でも、リスミーのときよりずっと、眠れています」
「まぁ、そのようですね。ロヒプノールのほうが作用時間が長いですからね」
「はい」
「もう少し眠れたらと思いますが、まずはこのまま続けますか？」
「はい！」

「で、皮膚炎というのは、どういう感じですか？」

腕をめくってみせた。

「あぁ、なるほど」
「だいぶ良くなってきました」

「では、次回は予約は入れませんので」
「はい」
「薬は、前の通りでいいですか？」
「はい。でも、ベ■◇◆□Aとかもらえるといいかも！」
「ははははは(笑)」
「ははははは(笑)」

くれないのですね(T_T)

今日は、ロヒプノール、ハルシオン、デパスをいただいて帰宅する。

鳴りませんように。

明日も、明後日も、私の携帯電話が鳴りませんように。

ずっとひとりで生きていく。
いや、ひとりじゃなくて、思い出と一緒に生きていく。

そのためには、着信音が鳴らないほうがいいよね。

一つでいいから、いい思いをして欲しい。

私は時々、「何のために生まれたんだろう」と考える。
つらいときには「なんで生んだんだ！？」と考えてしまうこともある。

私には、それを考える時間があるのだ。

でも、あと3週間ほどで、私の乳房にできた腫瘍は切除されてしまう。
この腫瘍は2月のエコーには写っていなくて、4月に見つかった。
切除すると決まったのが今月。
長く見積もって4,5か月で、腫瘍のいのちは終わってしまう。

私はこの腫瘍を切除することを希望していて、気持ちはゆらがない。
でも、腫瘍にとっては、「何のために生まれたのか？」を認識せずに生み出され、一方的に忌み嫌われ、気付いたら「切除する」と言われ、この世では何かいいことがあっただろうか？

手術のときまでに、一つでいいから、いい思いをして欲しい。
私に何ができるかわからないけど、あと3週間の間に、なんか一緒に楽しいこと、嬉しい事をしよう。
楽しいとか嬉しいって感覚が、細胞の片隅にでも残ってくれたらと願う。