精神科のL先生のところへ行った。まず仕事の話を少し聞いていただいた。
「さて、この2週間、調子はいかがでしたか?」
「おかげさまで、特に最後のほうにはよく眠れるようになりました」
「そうですか」
・・・そ、それだけえぇ?
「あ、あの、よく眠れないと基礎体温がつけられないので、その事情を婦人科や外科の先生にお話しすることが、ちょっと不安やったんです。それをお話しすることができたので、それ以降、だんだん眠れるようになったと思います」
「なるほど、不安感が解消されていったってことかもしれませんね」
「食事はよく取れていますか?」
「よく・・・よく・・・」
L先生はにこにこ笑いながら私の言葉を待ってくださる。
「あの、食事中に時々、家族に呼ばれても聴こえないことがあったんです。(聴力の問題よりも、自声強聴で食べ物を噛む音が耳に響くために、外界の音が聴こえづらいと感じる)」
「はい」
「そういうのが度重なると、心配をかけたり、座が白けたりするので、気をつけなくちゃと思っていると、のどが詰まった感じがして、食事がうまく飲み込めなくなるんです」
「なるほど。難聴が進んだのはいつごろでしたっけ?」
「昨年の10月に急に言われたんです」
「あの、ずっと気になってたんですけど」
「はい」
不思議なんだけれど、人前でほとんど使ったことのない手話を、自然と取り入れて話すことができた。私の手話は「手話だけでコミュニケーションが成立する」というレベルからは程遠いけれど、使わなければいつまでも使えないことに、変わりはない。
「私は、難聴のこと、卵巣のことで色々、ご迷惑をおかけすると分かっているときに、N先生からL先生に引き継いでいただいたので、
ご迷惑じゃないかってずっと・・・」
「え? え? え? ・・・そんな風に考えてはったんですか?」
「はい」
「何も、迷惑なんかじゃないですよ。逆に
『いったい何を迷惑やと思ってはるんですか?』って伺いたいくらい、迷惑なんかじゃないですよ」
「そうですか、安心しました」
L先生、ありがとう。
「それで、イソバイドとかメリスロンとか、飲まれてるんでしょうか?」
「はい、イソバイドを。あ、あぁあ、持って来たら良かった。あの、イソバイドの瓶でピラミッドとか作って、写真をいつもなら持っているんです。この前、ちょうど薬局の先生に写真を差し上げて、今持ってないんですよ・・・」
「瓶を?」
「はい、貯めてて」
「ははははは。昔からクリエイターやったんですね」
「ははははは」
「ちょうどその頃なんですけど、N先生に診ていただいてて『部屋の床の畳を換えてもらいました』ってメモに書いて渡したんですよ」
「はい」
「そうすると『床って言葉に意味がありますか?』って言われて」
「え?」
「『天井とか壁に、畳はないですよね? 床のって断らなくてもいいんじゃないですか?』って言われて」
「ははははは」
「文章書く仕事についてから、あの言葉をよく思い出すんですよ(笑)」
L先生に誕生日のためのメッセージを書いていただいた。
「前向きに努力されている姿勢に感嘆します・・・」
L先生、ありがとう。感嘆・・・感嘆・・・どうしよう、
そんな高尚な毎日を送ってないことがばれたら、どうしよう・・・。今日も、リスミー、ハルシオン、デパスをいただいて帰宅する。
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