まだ子どもだったころ、家族が留守になるので夕食の準備を頼まれた。
キャベツを千切りにしていたら、指を切ってしまった。
祖母から
「あんたに頼んだら、ろくなことない!」
と怒鳴られた。
それ以来、何かを手伝ったり、頼まれたりすると「失敗しないように。『ろくなことない』って言われないように」と、びくびくしながら作業をし、緊張のあまり失敗するという悪循環に陥った。
数年が経ち、私と性格の違う弟と母は、祖母への反撃を始めた。
弟や母は、行った作業に文句を言われると、
「じゃあ、自分でやれやっ!」
と、作業を中断してしまったり、
「何かやっても、必ず文句を言われるから、しない」
と手をつけなかったりした。
そのような事態になって初めて、「私は、腹を立ててもよかったのではないか」と気づいた。
なんと、呑気というか、間抜けだったのかと思う。
今でも「ふゆうさんに頼んだけど、ろくなことがなかった」と言われるのではないか、と恐怖する自分が心の中にいる。
「大丈夫。頑張っているのはちゃんとわかっているよ」という誰かからの言葉を受け取ると、安心し、嬉しくなるのは、恐怖の裏返しなんだと思う。
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