もう帰ることはできない。

新しい家の周りは、細い道が多い。
だから、幅の広い道に、少しでも早く出られるようなルートを選んで歩く。
暗い時間帯になったら、多少遠回りでも街灯の多い道を選ぶ。

さて、今日は昼間のもっとも暑い時間帯に、川沿いの道を歩いていた。
幅の広い道のずっとずっと向こうに連なる山々が見えて、道も川も電線も、色々なものが山へ吸い込まれていくようだった。

ふと「もう、帰ることはできないんだな」という気がした。
今、振り返ったら、自分の歩いてきた方向には道がなく、自分の前にだけ道があって、進むしかなくなっているような気分になったのだ。

私は引っ越しをしたその日の夜、ある人に手紙を書いた。
その時、
「物理的にどこに住んでいようとも、この人と会えることには、これからも変わりはない」
という思いが、どれほど自分を支えてくれているか、実感することができた。

今までお互いがどこで働き、どこに出張をしているときでも、
「この日には会いましょう」
という約束を時々交わしては、守り続けてきたから、ということが大きい。

「もう帰れないんだな」という思いと、「この人には、これからも会える」という思い。
矛盾なく存在するのが、なんだかおかしい。

お兄さんの期待を裏切る瞬間

コンビニへ行く。
財布だけ持ってレジに並んでいると、お兄さんが煙草の棚のほうに向かって、右半身を後ろに引きながら、私の言葉を待ってくれる。

そして、私がお兄さんの期待を裏切る瞬間が来るのだ。
「82円切手、3枚お願いします」
という言葉で。

納税地の異動

自営業なので引っ越しをしたら「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」を出さなければならない。



私は同じ税務署の管内なので1通で済むが、別の税務署の管轄となる場合は、両方の税務署に届け出なければならない。

思ったのだが、書く内容は大したことではないし、聞かれた通りに書くようにすればいいはずなのに、やたら難しく感じる。
事業所等を構えている人（たとえば開業医の先生で自宅とクリニックが離れているといった場合）は、もっとややこしい思いをして書いてはるんだろうなと思う。

誰かがあなたを幸せにする。

頑張ったら認めてもらえる。きっと役に立てる。喜んでもらえる。
そんなことを無邪気に信じていた。

でも、そんな事はなかった。

頑張らなくてもあなたに認められてる人、役に立っている人、あなたを喜ばせてる人はたくさんいる。
そして私は、頑張らないとそれができない。いや、頑張ってもできない。

きっと、私が頑張らなくても、誰かがあなたを幸せにする。
私にはできなかった。それだけのこと。

ステップを踏み始めている。

昔、ヒップホップダンスを習っていた時、なんとなく競技の場にも出たことがある。

「競技に出る」という目標があるからこそ頑張れるという面もある。ただ、私は競技の結果よりも、「昨日できなかったことが今日できるようになる」という、そのプロセスが楽しいことに、気付いていた。たとえば、昨日は理解できなかった「なぜ動きの流れがこういう風になるのか」ということが、一晩寝たら急に理解できるようになったとか、プッシュアップが昨日より多くできたとか、そいうことが。

今、仕事でもそういう面がある。編集の人と話し合って原稿を作っていくのは好きだけど、結果できた記事に、そこまでの執着はないというところがあるのだ。

で、ダンスと筋トレの話に戻る。
先月、ある人が取り組んでいるスポーツの話を聞いた。その人は口数が多い方ではないと聞かされていたけれど、とても饒舌に話してくれて、嬉しかった。

それ以来、私も少しずつステップを踏み始めている。引っ越し作業などもあって忙しかったし、「これから、何かの競技に出よう」とは思っていない。
だけど、自分が納得できるように、自分のペースで進めていけたら、それでいいと思う。