私は食が細い子だったので、食事の時には怒られてばかりいた。
小学校の高学年になって、以前よりは食事をとれるようになっても、「食べられなければ怒られる」という思い出を引きずってしまい、「美味しいから食べる」のではなく、「恐怖心から食べる」ということが続いていたように思う。
中学生になって、内科のH先生に診て頂くようになった。
何かの理由で食欲がなかったとき、「ご飯、食べなくて済んだらいいのに。でも怒られるから食べてるけど、頑張れば頑張るほど気持ち悪くなる」とおびえていると、H先生は言ってくれた。
「無理に食べなくていいよ。僕なんか、救急外来のある病院にいてた時、食パンにバター塗って、砂糖かけて食べてたけど、それだけでも十分働けてたよ。大丈夫、大丈夫」
たとえ、食卓ではどれだけ怒られたとしても、H先生はわかってくれる。
とても気が楽になったのをおぼえている。
今でも、喉が詰まった感じになって、ご飯が食べられないときは「食べなくていいよ」と自分に言ってやることにしている。しばらく「食べなくていいよ」と言っていると、少しずつ食べられるようになるのが、何とも不思議だと思う。
ご飯やお菓子を食べるのに、「緊張する」「身構える」という気持ちがなくなり、力を抜いて食卓に向かうことができるようになったことが、良い影響を与えてくれたのだと思う。
やがて、私は料理を作り、お菓子を焼くことができるようになった。H先生の誕生日に、焼きたてのクッキーを持って行ったら、とても喜んでもらえた。喜んで見せるしかないですよね、ごめんなさいい。。。
ただ、H先生と食べ物についての前向きな話ができるようになったことが、本当に嬉しかったのだ。
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