外科のS先生に、喘息手帳を渡しながらお願いをした。
「10月に誕生日が来るので、今年も何か書いてください」
「あぁ、いいよ。・・・去年、何書いた?」
「あるよ、去年の!!」
「・・・はははは(笑)。これは
人に見せてはいけない!!」
「ごめん、見せまくってる」
「今年何にしようかなぁ? いくつになるん?」
「32歳」
「ん? え? オーダリングシステムに32歳と11ヶ月って」
「あ、うそ、33歳。ごまかしてしまったよ(笑)」
「私にも33歳のときは、あったんや」
「あるでしょうね(笑)」
「あぁ、若かったなぁ・・・。まだ33歳や。人生これからや」
「はい」
「転んでもやり直せるよ」
「はい」
そういいながら喘息手帳には「
もう33歳ですか」って書くS先生は素敵だ。そして末尾に「
(しみじみ)」って書いてくれてありがとう。読んでると、なんかじわっと悲しくなってきた(泣)。
S先生と初めて会ったとき、自分には、乳房の異常に関する知識どころか、そもそも「正常な乳房とはどういうものか」という知識も、ほとんどなかった。
あれからS先生とは、いつの間にか何でも話して、笑って、泣いて、過ごせるようになっていった。もう10年も20年も付き合っている親しい誰かのように、思っていた。M先生に診ていただく機会を、2年間いただいた、その間もS先生を忘れたことなどなかった。
何がS先生と自分を結び付けているのか、その理由を知ることができないまま、長い年月が過ぎたけれど、「その理由」を知る機会は、きっちりとやってきた。その日書いた記事の一部を、引用しておくことにする。
■世界で一番信じている
http://www.mypress.jp/v2_writers/fuyuu/story/?story_id=1828107【引用始まり】 ---
あるとき「私は、他の人には耳のことを話せないでいるけれど、この人にだけは『耳が聴こえなくなったから、嫌われるかも』なんて心配は、一切したことはなかった」と思った。
「信じられる」というのは、そういうことなのだろう。
たった一度だけ「友達になれる?」「なるよ」という会話を交わしただけだけれど、ただずっと信じている。
【引用終わり】 ---
S先生、今年も素敵な言葉をありがとう。また来年もよろしく。
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