「ヤヌスの鏡」で人気漫画化となった宮脇明子さんが描かれた漫画「金と銀のカノン」文庫版を、偶然書店で目にし、手に入れたのは、もう3年以上前のことだ。
ピアノの才能に恵まれながら、経済的に困窮している家庭に生まれ、音楽学校に入る夢も叶わない真澄。とても裕福な家庭の令嬢として育てられた容子。真澄のピアノにほれ込んだ容子は、真澄を養女として迎え、ピアノを続けるための援助をしてほしいと、父に「おねだり」をする。しかし、真澄は性格的にも、環境的にもやばい人だったので、真澄をまるめこむことに成功すると、ライバルの学生がピアノを弾けないよう追い詰める、怪我をさせる、真澄の本性に気づいた人々は事故にあうよう仕向ける、など様々な手段を駆使して、トップに上り詰めようとする。。。
偶然だか、このころ一条ゆかりさんの「プライド」という漫画が佳境に入って、どう結末をつけるのかと息をのむ感じで読み進めていた。経済的に困窮している家庭に生まれ、音楽学校に入る夢も叶わない萌。とても裕福な家庭の令嬢として育てられた史緒。実家が経済的に破綻したときでも、どこからか必ず史緒に与えられる援助の手を、うらやましがり憎むようになる萌。萌は性格的にも、環境的にもやばい人だったので、史緒に精神的ショックを与えて歌えなくさせた手段を、あっちでもこっちでも駆使して、ライバルがう歌えないよう追い詰める。そして様々な手段を駆使して、トップに上り詰めようとする。。。
似た環境の二人組が、どういう結末を迎えるのか、楽しみにしていた。
「金と銀のカノン」の2人は、お互いの悪いところを引き出しあってしまう、という相性だったのだろう。容子は生まれて初めての「憎しみ」という感情を、真澄に対して持ってしまう。真澄は人生最大のチャンスをものにしたと思った、幸福の絶頂にある瞬間、容子によってピアノを続ける道を、封じられてしまう。何の救いもない結末だ。
「プライド」の2人も「歌以外の相性は最悪」という様子が、そこここに描かれていたので、お互いの悪いところを引き出しあってしまう相性ってあるよなぁ・・・と思いながら読み進めていった。
ただ「プライド」のほうが連載が長く続いていたためか、お互いの立場を理解する猶予というものがあった。お嬢様育ちの史緒が経済的に困るとか、一流のオペラ歌手たちの存在に触れた萌が「一流の人の中で、オペラを続けていくことには、運や生まれ持った環境だけではなく、大変な努力が必要だったのだ」と思い当たるところとか。
金と銀のカノンの2人は「自分は正しい」「あなたにはわからない」という考えで、お互いが突っ走ってしまい、最悪の結末になった。
プライドの2人は「相手の立場もわかる」「自分も完璧な人間ではない」と思った瞬間がお互いにあったことで、様々な立場の人が「理解しあえる」という結末には持っていけた感じがする(あの終わり方は・・・だが)。
最近、唐突に思い出したのだが、佐伯かよのさんが描かれた「星恋華」という漫画があった。こちらはアイドル歌手の話なのだが、プライドや金と銀のカノンとの違いは「主人公はトップアイドルになりたかったわけでもなんでもない」という点だ。その「引き気味」なところが、「人の好さ」「相手への思いやり」につながるのだが、プロの歌手が「自分には優れたところがない」と言っていては、仕事にならない。星恋華にも、ライバルとのぶつかり合いによって、切磋琢磨していくところが描かれていたが、私の印象に残っているのは「引き気味だった主人公が、変わっていく過程」だった。そういえば、星恋華であやのライバル役だったダイアナも亡くなっているんだよな。。。
[4回]
PR