暑苦しい人

T先生の診察に行った。

「こんにちは」
「はい、こんにちは」
「今回、月経が22日という周期で来てしまったのですが」
「ん？　不順になってきたかな？」
「そうですね」

基礎体温表を渡す。

「……うーん、ちょっとまずいペースですね」
「あの、もし次回が同じ22日というペースで来ると、ヨット教室と重なるのです」
「Σ（￣□￣）！！　それはあかんなぁ」
「はい」
「……えーっと、正直言って、ホルモン剤は使いたくないんや」
「ん？」
「月経を遅らせるための処方って、したことないやろ？」
「あの、前の先生にはしてもらったことがあるけど」
「ほぉ。でもな、せっかくそれなりのペースで来てるからなぁ」
「それは、私も思っているんですよ。もし、今回、遅らせられるとしても、これから先ずっと、ホルモン剤をもらってどうのこうの、っていうことになったら大変なんで」
「そうやなぁ」
「今やったら、インストラクターの先生もすぐそばにいてくれるので、初めから慣れていったほうがいいかなって」
「そうか、そう思えるならなぁ」
「がんばります」

「中間痛はどうやった？」
「実は、ちょうど今がすごく痛くて」
「ほぉ」
「ボルタレンサポも使わなければならず」
「最近、中間痛の訴えが続いてますね」
「はい。ただ、今に関しては、今日がピークで治まっていくと思うので」
「そうやな」
「はい。治まればヨット教室に安心して……」

「ていうか、ヨット教室がいつか、俺分からんし」
「明後日から何回か」
「Σ（￣□￣）！！　もう、そんな迫ってるんや」
「はい。だから、今日で痛みが治まってくれたら、とりあえず心配は要らないかと」
「うん」

「あの」
「ん？」
「P先生が、ヨット教室の受講通知が来たときに、本当に喜んでくれはったので」
「うん」
「ちょっと安心できました。こういう場合は、ご迷惑とちゃうんかな、他の教室に行ったほうがいいのかなって、考えてたんで」
「いや、それは逆やわ。彼は、喜んでたと思うよ」
「よ、喜んで？」
「うん。だって、何も分からなかった人が、Pさんのことを見て『やりたい』っていう風に変わっていったわけやから」
「そうでしょうか？」
「うん。共通の話題ができるっていう人が増えて、よかったと彼は思ってるよ。表情には出さんやろうけどな」
「はははは(笑)」

「でや」
「はい」
「『どうしても不安で仕方なくて、受講に支障が出そうだ』ということは、ある？」
「うーん。。。」
「これまで、月経の周期が2回連続して乱れたということは、なかったと思うんよ」
「はい、そうですね」
「一度は乱れたとしても、なんとなく元に戻ってくれてたんで」
「はい」
「ただ、気になるのは、月経が来なかったとしても、PMSもあるから集中力が切れるとか、月経が来た場合には痛み止めを使うことで、精神状態が変わるとかやねんけど」
「もし、集中力が切れて海に落ちたとしても、P先生がいれば心臓は動かしてもらえるやろうけれど(笑)」
「はははは(笑)」
「でも、多分、その日にどんぴしゃではいないと思うんで」

「僕としては、さっきも言ったけれど、ホルモン剤を出したくない」
「はい。私も、ホルモン剤の副作用とかを知っているだけに、使いたくないですね」
「そうしたら、月経の周期が元に戻ることを期待しよう！」
「はい」

「あの、P先生のウェアは、私の記憶の中ではグレーっぽい色が入っていてカッコいいんですよ」
「ほぉ」
「でも、自分は上から下まで黒一色なんで、ただの暑苦しい人になってしまっていて」



「はははは(笑)。彼はねずみ男っぽいからなぁ」
「Σ（￣□￣）！！　肯定しづらいですね」
「いや、そんな感じ、せぇへん？」
「そう言われれば……」
「なんでそんな黒一色のんばっかり買ったん？」
「初心者には無難かなぁと思ったので。でも着てみたら、シューズまで黒なんで、ホントに暑苦しいです」
「これから、似合うようになるよ(笑)」

「あ、あの、この前P先生のところへ来たとき、脈拍が速いって言われて」
「ほぉ」
「でも、私がしんどさを感じてないということをお話したら」
「はい」
「お薬とかもそのままで行こうって」
「ドクターストップをかけるとか、そういうことは言われてないよな？」
「はい」
「そうか、良かったなぁ。ここまで頑張ってきたんやからな」

今日はカバサール、ボルタレンSR、ロペミンをいただいて帰宅する。ありがとうございました。