P先生のところへ行った。
今日は待合がすごい人。
長い間、この病院に通っているけれど、こんなにすごい人が集まっているところは、見たことがなかった。
「こんにちは」
「こんにちは。今日は、こんなに待たせてごめんな」
「でも、先生はその間ずっと仕事やもんね? 」
「は?」
「私らはただ待ってたらいいけど、先生は大変やん?」
「いや、そっちだって忙しい中、来てくれてるんやから」
「調子はどうやったかな?」
「あの、今日はなんか脈拍が速いんですよ」
「あれ? どうしたんやろな?」
「自分でも、びっくりして、何かの間違いやと思ったんです。それで計りなおしたんですけど」
「今日までに何か、変わったことは?」
「あの、他の病院で心電図をとる機会があって」
手紙を渡す。
「ここまでの検査をするということは、悪化していきそうなの?」
「いえ、診察してくださった先生も、私自身も悪化しそうにないという感じがしているんで、今すぐには手術とかも必要なさそうです」
「……はぁああ、わかりました。聴診をしましょう」
「はい」
「……速いね。心配な音というのはないねんけど、速い」
「え、今って、速いんですか? 自分では何もしんどくないから、待っている間に落ち着いてきたんかなって感じてました」
「うん、速い。まぁ、100くらいやけど」
「え、なんで? 本当になんでだろう?」
「うん、ホンマに僕も分からん。しんどいというのは、ない?」
「はい、ないです」
「それなら、いつも通りお薬を飲んでいこうかな」
「あの」
「ん?」
「もらいました!」
「何をもらったの?」
「ヨット教室のお知らせ」
「あ、良かったなぁ!」
「はい、ありがとうございます」
「そうかぁ。満員やって聞いてたけど、受けられるんや。良かったなぁ」
「あの、1つだけ、あの、手袋って、バーベル上げ用のんでも大丈夫?」
「バーベル上げ用……っていうのが、どういうものか」
「すべらないようになってる、指先の抜けているやつ」
「指先が抜けている……あのな、手のひらを保護できるなら、いけるよ」
「手のひらを。それなら保護できます」
「それなら、大丈夫やよ」
「ありがとうございます」
「じゃあ、8週間後な」
「はい」
「遅くなってごめんな」
「いえ、ありがとうございました!」
P先生の「良かったなぁ」という言葉を聞いて、嬉しかったし安心した。
「ご迷惑だったら、どうしよう」って気になっていらから。
今となっては、これまでの経緯をあれこれ考えるよりも、「これからご迷惑にならないように」「(教室に行っても)いいよって言ってよかったと思ってもらえるように」していくことが、大切なんだと思う。
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