回覧板で、
「敬老祝い金を受け取る資格のある方は、このリストに名前を書いてください」
という紙が回ってきた。
私は先月まで月当番だったので、今月は一番最後に回覧板を受け取ることになる。
だから、リストには他の家の方がすべて記入されていた。
「何も書き込まないのはうちだけか」
とちょっと悔しい。
皆さんの歩まれた70年、あるいは80年といった年月はどのようなものだったのだろうと考えた。
今、住んでいる家にも、高齢のU田さんという方が、おひとりで住まわれていたと聞いた。
だから、引っ越しのあいさつに行った時も、
「U田さんが住まわれていたところです」
と言えば、通じた。
そして突然よそからやってきた自分のような若輩者を受け入れてくれた。心配してくれた。
「ここに住んでいる人に、そんな悪い人はいないけれど。
でも『若い女性が住んでいる』っていう噂が立てば、どこから誰が聞きつけて、近づいて来るかわかれへんのよ。
だから、戸締りとかちゃんとして」
と、初対面の私に言ってくれたのだ。
皆さんの人生に、色々なことがあったんやろうな。
そのたびに、器を広げてきたんやろうな。
大きな器、大きな心を持ってはるから、受け入れてくれはったんやろうな。
私はそんな風に、年を取っていけるのかな。
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