あるとき、70代の女性と話していたら「明日は、尋常小学校の同窓会なのよ」というお話だった。
その頃私は、ドラッグストアで安値で買う、細かいグリッター(金の粒、ラメより細かいもの)の入った、地味目色のネイルカラーを愛用していた。
「明日、同窓会なんですよね? ちょうどいい機会だから、ちょっと塗ってみようよ。小指と薬指だけでもいいよ」と強引に、ネイルカラーを塗らせていただいた。初めは「年寄りだから、小指と薬指だけね」と言っていたが、その人ものって来て、最終的には10本の指全部に塗らせていただいた。
「私があなたくらいの頃は、マニキュアって『真っ赤』というイメージがあったし、水商売の方がするものだと思っていたもの。時代は変わったね」とおっしゃっていた。
マニキュア(ネイルカラー)は、除光液(リムーバー)で落とさない限りは、長く爪に残っている。一方で1週間も経つと、爪の根元のほうが伸びてきて、かっこ悪くなるので「その頃、除光液で落として差し上げますから」と言っていた。
1週間が経ったとき、その人は「落としてくれなくていい。せっかくだから」と言ってくれた。
素人のするマニキュアを気に入ってくれて、同窓会を楽しんでくれた。「このままがいい」と言ってくれた。そのことが、嬉しかった。とても。
同窓会の思い出が少しでも残るように、結局、そのマニキュアはそのまま、残した。
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