その人に会ったのは、霊能者という言葉を知らないほど、幼い時期だった。
祖父母・両親が、ある大きな買い物をするかを連日話し合っていて、9割がた「買う」という話に決まりかけた。そんな中、祖母と私、弟(だったと思う)で出かけたときに、街角で小さい机を出して、占いをしている女性がいた。祖母が私たちに「ちょっと相談したいから、待っていて」と言って、占い師さんに相談を始めた。
占い師さんは、手相は見たと思うが、他に道具などは使わなかった。そして「買うのは良いと思うが、数年でそれを手放すことになる。それは、良いことがあって手放すので、そのときに執着しないことが大事」という話をされた。
ふつう、大きな買い物をするのに「手放す」という前提で買う人はいないだろう。幼い私にも「ホントかなぁ・・・?」という気持ちはあった。
また、その占い師さんが「昭和51年に亡くなった人が、祖母を守護をしている」と言った。祖母は「そういう人が身近におらず、わからない」と、その場では言った。
しかし、帰宅後になって、私も祖母も思い当たる親族がいることに気づいた。昭和51年とは、私が生まれた年で、その数ヶ月前に亡くなった親族がいる。そんなわかりやすいことを、占い師さんの前では忘れていたというのが、不思議でならなかった。
さて、そのとき「買う」と決めたものは、今、実際に手元にはない。それを手放した経緯というのは、予想もできないような流れだったが、より良いものが手に入ったのは事実だ。より良いものを手に入れられると決まったとき、あの占い師さんのことを、誰もが思い出した。
今思えば、その方は霊能者という存在だったのかもしれない。
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