主人公は「仙人になる術を教えて欲しかったら、下男として数年働くように」という信じがたい条件に従って、主の家で働いている。
主人公が最後まで「仙人になれる」と信じる、その思いがあまりにも美しい。
私には「世にも奇妙な物語」で映像作品として公開されたものの印象が、強く残っている。
「俺をだましたやつを笑ってやる」「俺を笑ったやつを見返してやる」という気持ちはまるでなく、ただ願いがかない、晴れ晴れとした顔で去って行った主人公の神々しさ。
私にも「夢がかなった」「思いが現実になった」という経験がある。そのときは「信じていればかなう」といった「ポジティブシンキング」というものとは違い、ただ「私にはこれを可能とすることができる」と決めた瞬間がどこかにあったように思う。
「仙人になることができる」と決めていた主人公は、笑われようと、つらかろうと、「決めた」自分を信じたのだろう。
私の思いは、予想通りに現実になったものも、意外な形でかなったものもある。いずれの場合にも「もうすぐだ」というときに、「仙人」のラストシーン、彼をあやつっていたはずの人々を置き去りにして、自由な空へ歩いていく美しいシーンが思い浮かぶ。
今までのしがらみ、思い込み、つらさ、悲しさも、とらわれないで、そこにおいていこう。私を迎え入れてくれる空へ、飛び込んでいこう。
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