S先生のところへ行った。
「おはようございます」
「はい、おはよう。今日『結果説明』ってなってるんやけど、前にしっかりと話した記憶があるねん」
「はい。写真持ってますよ」
「そうやんなぁ。組織を生検に回さんといけないこともなかったんで」
「はい」
「心配は要らないという結果で、いいと思います」
「ありがとうございます。あの、検査をしてくれたのがM先生と言ったら、T先生はすごいテンションが上がってはりました」
「はははは(笑)。M先生の診断結果がここにあるねんけど、胃の上部……入口よりもさらに上の方は、あんまり荒れてないねん。他は全体的にこういう(鳥肌状の)感じ」
「はい」
「白っぽいところもあるけど、採取して検査に回したとしても、このレベルでは何も出てこないと思う」
「あの、免許を持ってきました」
「おぉ! 一級やもん、すごいなぁ」
「ありがとうございます。検査の日って、学科試験の4日前だったんですよ」
「うん」
「で、勉強してても頭に入ってこなくて」
「まぁ、そらそうやろ(笑)」
「M先生が『こんな状況で落ち着いて勉強できる人なんかいてないし、明日やればいけるよ』て言ってくれたんですけど、それで不安が解消されるわけもなく(笑)」
「確かになぁ。まぁよかったやん」
「ありがとうございます」
「で、これからどうするの? どこで船に乗るの?」
「免許を取得した人向けの講習があるんですよ」
「ほぉ」
「まずそういうのんは、行きたいと思っています。それと、年明けに海上無線の試験は行きたいです」
「胃のこと以外の調子はどうですか?」
「あのね、痩せるっていうことをお話しているんですけど」
「はい」
「下着が骨にあたって痛くて、着られないんですよ」
「骨が目立つような体格になっているということ?」
「はい、あの肋骨のとこ(見せる)」
「うわぁ! これは……」
「美観を損ねますよね」
「美観っていうとアレやけど、ビジュアル的に問題があるってことやな(笑)」
「ははははは(笑)」
「……これは、たとえばブラジャーのワイヤーは痛いよな?」
「はい、そうですね。あと、タイツのゴムとか、スカートのホックとかも骨にあたると痛いんで、気を付けてはいるんですけど」
「……スポーツ用のブラジャーとかは、自分やったら持ってるやろ?」
「はい。今もそれにしてます」
「……そういえば、P先生って検査してくれてたやろ? どうなったん?」
「あ、見せてなかった? あの、何も異常はないって」
「おぉ、糖尿病までチェックしてくれたんや」
「はい」
「P先生はどうしようとしてはるの?」
「食事を、たくさん食べようとするのは苦痛なので」
「ん? ちょっと待って、食事をするのが苦痛?」
「いえ、あの通常の食事はできるんですが、太るためだけに、今まで以上に食べるとなると、ストレスになるので無理しなくていいと」
「あぁ、そういう意味か」
「はい。で、ウェットスーツも今の体型に合わせて買っても、太ったら着られなくなるというものでもないから大丈夫って」
「そうか。良かったな」
「さて、ボルタレンサポって要る?」
「T先生にもらってるから、今は大丈夫です」
「あれ、これはなんで出したっけ?」
「そもそもは乳房の痛みがひどくて、迷走神経反射を起こすという理由やったけど、今、排卵痛がひどくて使ってます。T先生とも話してるんですが」
「排卵痛だった場合は、何日くらい使ってる?」
「長くて3日くらい」
「T先生はどうしはるつもりなん?」
「T先生は、排卵を起こさせるとかえって調子が悪いのであれば、考えるべきかなぁと……」
「え、月経を止めてしまうということ?」
「何を考えるのかまで話が進まなかったのですが、私の正直な思いとしては、どうせ3日くらいで痛みは止まるのだから、我慢すればいいんちゃうかなって思ってて、それをT先生にお話したところで、ストップしてます」
「ふゆうとしては、生理痛と同じような感覚ということ?」
「そうです、まさにそういう感じ」
「あの、この前T先生と話した時に」
「うん」
「なんか『交際する予定はあるのか?』とかめっちゃ突っ込まれて」
「交際?」
「その日、T先生の診察の後で友人に会う予定だったんです、偶然ですけど。それに海の話もあって『こういう人と会ってこれから、仲良くしてもらえそうだ』って話したりしたんですけど、そうしたら絡む絡む!」
「俺、なんかT先生の気持ちが分かる気がする」
「え、なんで?」
「まず想像やけど、今のふゆうの環境でどこに出会いがあるのかが、俺らに分かれへん。たとえばでっかい会社で働いてて、人がいっぱいいる環境やったら、出会いもあるやろうけど」
「はい」
「そして、こんな風に話してくれることしか分からんやん。どこでどういう付き合いが生じてるのか分かれへんから、Tさんの性格からしたら、見えへん部分に一言二言、言いたくなるやろなーとは思う」
「あの『P先生を狙っているの?』みたいに言いはったけど(笑)」
「ははははは(笑)。実際はどうなん?」
「だから違っ! でも、T先生が見ていてイライラしてはるのは分かります」
「なんで?」
「正直な気持ちを言うとP先生はすごい好きですし、海の言葉が通じるっていう意味でも、1番頼れる人です」
「うん」
「だけど」
「自分が、甘えそうになって、なんでも話しそうになるのを、自分で恐れていて。そのあまりに線引きをしようとするのが、T先生から見たら逃げようとしているかのように見えるんだと思う」
「俺も、P先生は立ち入って欲しくない時は、言わはる人やと思うねんな。中にはそれを言えなくて、我慢して付き合ってしまうタイプもいるけど。M先生みたいな(笑)」
「はい(笑)」
「でも、P先生ならば、ちゃんと言ってくれると思うよ。逆に言ったら、『いいよ』って言ってくれてる間は、その通りしてていいねん。ただ、気になるんであれば、3回とか4回『いいよ』って言ってもらっても何回かは遠慮しとくとか、そうやっていけばいいと思う」
「はい。私がこだわっていたら、P先生を結果的にしんどくさせると思うので、気を付けようと思っています」
「T先生から見て、P先生にそういう接し方をするところが、一事が万事、どういう人に対してもこうなんかなぁと心配になるんかもしれへんな」
「そうかもしれません」
「今の暮らしはどうや? もう慣れた?」
「はい!」
「そういえば、(スーパーの)○ー○○って綺麗になった?」
「なりましたよ。お惣菜売り場がすごく広くなって、野菜も多くなりました」
「でも、外観はそんなに変わってはないやろ?」
「外観は、そうですね。塗り直しはあったけど、そう大きくは変わってないです」
「そうやんな?」
「はい。お惣菜を買いに来る人がすごい増えたんで、わりといつも混んでるんですよ。それで、買い物に行くことをちょっとためらう時もあります」
「さて、Pさんによろしくな」
「はい」
「Tさんとも飲み会したいから『Mを通して連絡します』って伝えて」
「『M先生を通して』なんですか?」
「うん(笑)。まぁ、年内は無理やろうなぁ。T先生も忙しいやろうから」
「年内はないの?」
「多分ない」
「『M先生を通して』やから?」
「それは違うやろ(笑)」
今日はファモチジン、サイトテックをいただいて帰宅する。ありがとうございました。
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